Bengal Report

1993年から1994年にかけて、バングラデシュとインド(西ベンガル州)に滞在した。いちおうベンガル語の学習という名目の「留学」だったが、本当の目的は、これら2つの国にまたがるベンガル地方の文化や自然を身体で感じることだった。とりわけこの地方の人々の信仰に興味を抱いていた。これはそのときの滞在記。

January 06, 2007

お米つながり

これを書いていて思い出したことがある。チッタゴンのベタギ村での出来事だ。

泊めてもらった孤児院で迎えた初めての朝、朝食を用意してもらったら、なんとコーンフレークと薄切りパン。コーンフレークは、いかにも古そうな感じで、パンも、少々干からびている。いかにも不味そう。食べたら本当に不味かった。こんな西洋のまねごとみたいな朝ご飯、しかも恐ろしく不味いものを、地元の人たちもみんな食べているのだろうかと思い、聞いてみると、ベンガルの標準的な朝ご飯は、「水ご飯」(前の晩、鍋にくっついた残り飯に水を注いでおいたもの)だという。お粥のようなものだ。それにスパイスの効いた豆スープなどを添えて食べる。豆スープは日本で言うとみそ汁のようなもの。その方がぜったい美味しそうだ!

そもそも、コーンフレークなんてこの辺のお店に売ってない。なんで私はコーンフレークとパンなのかと聞いてみると、外国人はみんなこういうものを食べると思い、わざわざチッタゴンの街まで買いに行かせて用意しておいたのだそうだ。彼らにとっては、外国人というのは一種類しかない。

とんだ誤解だ!私は日本人で、日本の主食は、あなた達と同じ、お米なのだと説明すると、みんなの顔がぱあーっと輝いた。「えっ!お米を食べるの?」「な~んだ、お米でいいのか!」と、みんな嬉しそう。私はうんうんと頷いて、次の朝からは不味いコーンフレークではなく、普通のご飯にしてもらった。それと、もちろん豆スープ。

インド亜大陸は米を主食にする地域と、小麦を主食にする地域に別れる。大きく分けると、東・南では、もっぱら米。北・西(中央も含む)では、もっぱら小麦。(もっとも、地域によっては両方食べるところもあるが。) ということで、ベンガル地方(東に位置する)は、もっぱら米を主食とする。でも、ベタギの人たちは、それをベタギ特有の極めてローカルなもので、「外国人」の口には合わないだろう、と思ったのだ。確かに、かつての宗主国のイギリス人も、「西パキスタン(現在のパキスタン)」人も、パン食だ。東パキスタン時代に、自分たちの米食の特異性が強調されたのかもしれない。


米を主食とするということは、食べ物に関してだけでなく、多くの共通点を生み出す。まず第一に村の景観。田植えの時期に水田が広がることだ。水を張った田んぼがあるということは、そこに似たような生き物が生息するだろう。稲刈り時の匂いもきっと同じ。田んぼは、村全体で協力しないとできない作業なので、共同体のあり方もある程度似ているに違いない。 そういう意味では、ベンガル人は、かつて無理やり「同国人」とされたパキスタン人よりも、日本人により近いと言えるかもしれない。

「お米を食べる」という、ただそれだけのことで、人種や言語や地域の違いを超えて、何か存在の根源的なところで一気につながった気がしたのは、なかなか感動的だった。

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