ダッカにて(5)
1993年6月14日
中流~上流階級の子どもたちは、たいてい家庭教師について「タゴールソング」を習っている。バングラデシュには、2つのタイプの伝統的な歌がある。ひとつは昔からの民謡や仕事歌。もうひとつは、大詩人タゴールによって作詞作曲された、いわゆるタゴールソング。前者はもうほとんど姿を消してしまったそうだが、後者の方は今も人気がある。そのわけをAさんに聞いてみたところ、彼はこう言った。
「民謡というのは労働階級の人々のものだが、タゴールソングは知識階級のもの。前者が人気がなく、後者が生き残るのは当然のなりゆき」
だって。外国人の私からすれば、西洋音階を中途半端に取り入れたタゴールソングよりも、ベンガル民謡の方がはるかに興味深いけどな...
1993年6月20日
バングラデシュには、レストランがあまりない。あっても、ほとんどは中華料理店。そして店内は、なぜかいつも真っ暗。他の客の顔はおろか、肝心の料理さえよく見えないほど。
Aさんが言っていたことだが、バングラデシュには外食文化というものはなく、レストランで食べると、なんとなく後ろめたい気がするらしい。なぜなら、レストランはデート(この国では男女の婚前交際はタブー)や、売春まがいのことに使われることが多いからだそうだ。 ...デートと売春が同類なんて。
今日も、近くのレストランで2人のビジネスマン風のシーク教徒(ターバンを巻いたインド人)と、厚化粧をした2人のバングラデシュ人の女の子が、例の暗闇の中で一緒に食事しているのを見かけた。
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