Bengal Report

1993年から1994年にかけて、バングラデシュとインド(西ベンガル州)に滞在した。いちおうベンガル語の学習という名目の「留学」だったが、本当の目的は、これら2つの国にまたがるベンガル地方の文化や自然を身体で感じることだった。とりわけこの地方の人々の信仰に興味を抱いていた。これはそのときの滞在記。

February 03, 2007

ダッカにて(5)

1993年6月14日

中流~上流階級の子どもたちは、たいてい家庭教師について「タゴールソング」を習っている。バングラデシュには、2つのタイプの伝統的な歌がある。ひとつは昔からの民謡や仕事歌。もうひとつは、大詩人タゴールによって作詞作曲された、いわゆるタゴールソング。前者はもうほとんど姿を消してしまったそうだが、後者の方は今も人気がある。そのわけをAさんに聞いてみたところ、彼はこう言った。

「民謡というのは労働階級の人々のものだが、タゴールソングは知識階級のもの。前者が人気がなく、後者が生き残るのは当然のなりゆき」

だって。外国人の私からすれば、西洋音階を中途半端に取り入れたタゴールソングよりも、ベンガル民謡の方がはるかに興味深いけどな... 


1993年6月20日

バングラデシュには、レストランがあまりない。あっても、ほとんどは中華料理店。そして店内は、なぜかいつも真っ暗。他の客の顔はおろか、肝心の料理さえよく見えないほど。

Aさんが言っていたことだが、バングラデシュには外食文化というものはなく、レストランで食べると、なんとなく後ろめたい気がするらしい。なぜなら、レストランはデート(この国では男女の婚前交際はタブー)や、売春まがいのことに使われることが多いからだそうだ。 ...デートと売春が同類なんて。

今日も、近くのレストランで2人のビジネスマン風のシーク教徒(ターバンを巻いたインド人)と、厚化粧をした2人のバングラデシュ人の女の子が、例の暗闇の中で一緒に食事しているのを見かけた。

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