シャンティニケタンにて(4)
1993年8月23日
昨日の晩、あるバウル一家の家を訪ねた。わらぶき屋根、泥作りの小さな庵風の家だった。彼らと、村人数人が、集落内にある、彼らいわく「お寺」(やはり粗末な小屋)に集まっていた。子ども達や犬もいた。みんな一緒にランプの光の中で歌ったり、楽器を鳴らしたりしていた。毎晩こうして歌うのだそうだ。こういう環境で育つと、きっとどんな子でも歌えるようになるだろう。3歳ぐらいの子どもが、音楽に合わせて上手に踊っていた。私には、リズムが難しすぎて、拍子を取るのもやっとなのに。
そして今朝、いつものようにスサントのお店で朝食をとってゆっくりしていると、バウルの親子がやってきて、その息子の方(わずか11歳!)が、ドータラ(2弦のギターのような楽器)を弾きながら歌った。すでにバウルソングのいい味を出している。
バウル... 面白い人たち。
1993年8月25日
スサントの店の前に、いつもひとりの年老いた力車引きが止まっている。このじいさん、もう80歳をこえているのだそう。毎朝、花に糸を通して花輪を作り、せっせと自分の力車に飾っている。ボロボロのサイクルリキシャ(前に自転車がついた人力車)なので、ビニール袋をあげると喜ぶ。それでリキシャを補修するのだそうだ。
ようやく彼の名前を聞き出した。サルジュ。ビハール州から来たそうだ。インドで一番貧しい州。こうして近隣の州に出稼ぎに出て、そのまま帰らない人が多い。彼にも家族があったらしいが、病気で死んでしまったそうだ。いま独り暮らし。いつもパーン(噛みタバコ)ばかり食べている。たまに近くの茶店でご飯とカレーを恵んでもらっている。
彼はなかなかひょうきんだ。この間、スサントが道の反対側から、「じーさん、今日はまたええルンギ(腰布)はいとるなあ!」と叫ぶと、このサルジュじいさん、手を鉄砲の形にして、スサントをバーンと撃つ真似をした。素晴らしい!!<>
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