シャンティニケタンにて(6)
1993年9月9日
屋台でエッグロールと焼きそばを売っているトゥルという青年と友達になった。彼はビハール州からの移民2世。だから、家の中ではヒンディー語ではなし、外ではベンガル語ではなす。学校へは行けなかったみたい。でも、いちおう読み書きは出来るらしい。彼は詩を作る。ヒンディー語の詩。でもベンガル文字で書く。
このあいだ彼は、下働きの小さな男の子に、近くの店で砂糖を買ってくるように言った。雨が降っていたので、その子は嫌がった。すると、トゥルは、雨の中に出ていくことの素晴らしさを表現したタゴールの詩を暗唱して、その子に聞かせた。そして、その子は砂糖を買いに出て行った。なんという文化的な説得のしかた!
このトゥルという青年、裸の後ろ姿が惚れぼれするほど美しい。日々の肉体労働の成果だろう。
1993年9月12日
今日、マキシム(あのペルーからやってきた音楽家のおじいさん)をボルプールの町で見かけた。村の子ども達と両方の手をつないで一緒に歩いていた。ほかにも何人かの子ども達が一緒だった。みんな何だか嬉しそうな顔をして。そして、その少しあと、彼らが近くの池で泳いでいるのを見た。ここはお年寄りにとって、なかなかいい場所だと思う。子ども達がとても自然な形で年寄りを慕い、一緒に遊ぼうとする。
1993年9月17日
最近知り合った、シャシャンクというジャーナリストのおじさんに、ある教授宅でのホームコンサートに連れて行ってもらった。その教授の姪、そのほか4人の子どもたちが、インド古典音楽と、タゴールソングを歌った。みんな高校生。みんな真剣に聴き、真剣に批評する。ベンガルでは、「歌う」という行為がものすごく重要な意味を持っているようだ。
1993年9月20日
ここには変わった人たちが多い。国籍もいろいろ。今日キャサリンというドイツ人の女の子としゃべった。彼女は、「私は自分が何をしたくないかは分かるんだけど、何をしたいのかという点になると混乱してしまう」と言っていた。だから、今はとりあえず美術の勉強という口実でここに滞在しているらしい。ここにいる外国人たちは、私も含めて、みんなそんな感じだと思う。
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